フラスコレベルの実験から量産化にこぎ着けるまで6年。あきらめそうになったこともあったが、仲間と上司、そして「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」という会社の使命が支えになった。
「本気で情熱を注いでいれば、周囲にも伝わるし、いいものができあがると実感しました。みんなに感謝です」
この製品は対外的にも高く評価された。22年には優れた化学技術に贈られる日化協技術賞の技術特別賞、23年には優れた国産技術開発をたたえる市村産業賞の功績賞を受賞した。
現在の主な業務は市場へのプロモーション活動だ。「プロジェクトを通じて新技術を安定した量産に持ち込むことの難しさを知りました。世の中を変えるような取り組みに挑戦するには、技術の専門性だけでなく、ビジネスの視点が必要。一つの製品に一貫して携われたからこそ、そういう見地が身につきました」
幼い頃から関心を持ち続けた環境問題を、化学の力で解決する。その目標に着実に近づいている。(ライター・浴野朝香)
※AERA 2024年1月22日号