クラレ 機能材料カンパニー アクア事業推進本部 マーケティンググループ主管 薮野洋平(やぶの・ようへい)/1985年生まれ、岡山県出身。2010年、クラレ入社。水処理膜を中心とする分離膜の研究開発・生産技術開発業務に従事。21年からマーケティンググループで事業戦略立案、新規事業企画などマーケティング活動に取り組む(撮影/伊ケ崎忍)

 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年1月22日号にはクラレ 機能材料カンパニー アクア事業推進本部 マーケティンググループ主管 薮野洋平さんが登場した。

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 持続可能な社会への関心の高まりから、工場の産業排水を自社で回収、再利用する企業は増えている。水資源を有効に利用するためには、水処理にかかるコストの削減や性能の向上が求められる。

 そういった企業に向けてクラレは水の処理膜を提供している。2010年にはこれまでより高性能で効率的にミクロの粒子をろ過する処理膜を開発する一大プロジェクトが始動した。

 チームの中心メンバーとして、製品の開発に必要なすべての基本技術を見直し、これまでにない水準の高機能化を実現した。

 最初に取りかかったのは膜の試作だった。水の処理膜は一般的に細いストローのような形状のものを何本も束ねて使用する。一本一本の表面に0.02マイクロメートルの穴がたくさん開いていて、フィルターの役割をする。

 膜にふさわしい素材は何か。その素材にどんな薬剤をどれぐらい合わせるべきか。チームの仲間と考えながら作ったサンプル数は、千個に及んだ。並大抵ではない労力と時間をかけた結果、膜自体に施した工夫で水が効率よく膜を通ることができるようになった。膜の表面に汚れがたまりにくい構造も実現した。

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