7本のレギュラー番組を抱える超人気タレント・松本人志さんの突然の休業宣言に、混乱が広がった。この激震の背景には、社会の性暴力への意識が高まっていることがある。AERA 2024年1月22日号より。
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複数の女性に性的行為を強要した疑惑が「週刊文春」で報じられたお笑いタレント「ダウンタウン」の松本人志さん(60)が1月8日、所属する吉本興業を通じて、当面の間、芸能活動を休止すると発表した。吉本興業は、松本さんから「裁判に注力したい旨の申し入れがあった」といい、「本人の意思を尊重する」としている。1月10日発売の「週刊文春」では、別の複数の女性らの証言も報じられた。松本さんと女性たち側の言い分は食い違っている。
ファン向けの強気姿勢
SNSなどネット上では、「事実だとしたら最低。制裁されるべき」「女性蔑視にもほどがある」「これを機に、芸能界の膿(うみ)を出し切ってほしい」など批判の声が上がる一方、「松ちゃんのこと信じてます」「事実無根だと証明して早く復帰して」など擁護するコメントも多い。
「活動休止は、体裁を取り繕った“保留”だろうと見ています」
こう話すのは、性暴力被害者の支援を行う弁護士の川本瑞紀さん。活動休止の発表は、「ファン向けに出した強気のコメントに見える」とし、「吉本興業は当面の間、世論を注視しながら、松本さんを復帰させるかどうかの判断をするのでは」とする。
活動休止の理由を「裁判に注力するため」としていることを踏まえると、今後、松本さん側から週刊文春サイドへの名誉毀損訴訟の提訴が見込まれる。誰宛ての裁判を起こし、どのような行為を、どのような理由で名誉毀損とするのかなどは、現時点では定かではない。
力関係で起きやすい
一方、告発した女性に対し、「8~9年前の話をなぜ今になって」など、性被害を訴えた人をさらに傷つけるような「二次加害」もみられる。これについて「性被害について話せるようになるまでには時間がかかる」と指摘するのは、弁護士の上谷さくらさん。実際、性被害を訴えるまでに30~40年かかる人も珍しくはないという。こうした点も踏まえ、故ジャニー喜多川氏による性加害事件が大きな問題となった昨年、性犯罪に関する法改正によって公訴時効が延長され、不同意性交罪は10年から15年に、不同意わいせつ罪は7年から12年になった。