「最近、あぐらがかけなくなった」「少し距離を歩くと足の付け根が痛む」――。変形性股関節症でみられる初期症状です。中高年の股関節の痛みの原因となる代表的な病気といえば変形性股関節症であり、ひざの痛みといえば変形性膝関節症です。これらの病気になりやすい人や気をつけたい症状、治療の進歩などについて解説します。

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 本記事は、2024年2月下旬に発売予定の『手術数でわかる いい病院2024』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。

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 股関節の痛みのおもな原因には、「大腿骨頭壊死(えし)症」「大腿骨寛骨臼(かんこつきゅう)インピンジメント(FAI)」「変形性股関節症」があります。とくに変形性股関節症は最も患者数が多い病気です。

 大腿骨頭壊死症は血流不全により大腿骨頭部が壊死する原因不明の病気で、厚生労働省により指定難病と認定されています。壊死の範囲が広く、骨頭の圧潰(あっかい)が生じ、痛みで日常生活が制限される場合には手術が必要になることがあります。

 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)は生まれつきの股関節の形態異常や加齢、環境変化により、股関節を動かした時に大腿骨と寛骨臼の縁がぶつかり痛みが出る病気です。とくに股関節を大きく動かすスポーツ経験者に発症リスクが高いとされています。進行すると関節軟骨のダメージが進み、変形性股関節症へと進展することがあります。

 変形性股関節症は加齢によって関節軟骨がすり減り、変形する病気です。日本人には先天的に寛骨臼の面積が狭い「寛骨臼形成不全」が多く、これによって股関節の一部に負担がかかり、関節軟骨がすり減ることで痛みが生じます。進行すると骨と骨が直接ぶつかり、股関節が変形し、痛みが増します。

 変形性股関節症は明らかな原因がなくても、加齢によって股関節の摩耗が進むことで発症することもあります。とくに過去に股関節のケガや病気があれば、変形性股関節症の発症リスクは高まります。患者の約8割は女性で、多くは40~50代で発症しますが、早いと30代から痛みが出はじめます。

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早期発見のために知っておきたい変形性股関節症の症状