変形性股関節症の症状としては、立ち上がりや歩き始めの際に足の付け根が痛んだり、違和感を感じたりするところから始まるとされています。進行していくとどうなるのでしょうか。関西労災病院整形外科部長の安藤渉医師は症状についてこう説明します。

「最初は、股関節が動かしづらい、あぐらがかけないという違和感や、少し距離を歩くと痛む、歩き始めだけ足の付け根が痛むけれど、しばらくすると痛みがなくなる、という感じで始まることが多いです。徐々に階段の上り下りなど、股関節を動かす動作で痛みが生じるようになります。症状が進行すると、常に痛みを感じるようになり、日常生活にも支障をきたすようになります」

人生を謳歌するため、40代で手術選択も

 股関節の痛みで病院に行く場合、受診する診療科は整形外科です。病院ではどのように診断されるのでしょうか。

「X線検査によって、関節の隙間の幅を確認すると軟骨のすり減り度合いがわかります。関節の隙間が狭くなっていれば、変形性股関節症と診断できます。関節の変形が少ないのに痛む場合などは、その他の疾患との鑑別のためにMRI検査もおこなうことがあります」(安藤医師)

 変形性股関節症の場合、肥満があれば減量によって関節への負担を減らし、その症状に合わせ、痛み止め薬なども使用して痛みを抑えながら、運動療法を積極的におこなう保存療法がおこなわれます。

「痛みのせいであまり動かなくなると、筋力が落ちてさらに痛みが悪化してしまいます。ウォーキングなど、股関節周囲の筋肉を鍛えることが大切ですが、痛みで歩きにくいという場合は、浮力によって、痛みが出にくいプール内を歩くのもおすすめです」(安藤医師)

 しばらく保存療法を実施しても痛みが改善せず、変形も進行して、日常生活に支障をきたしている場合には、年齢や活動度なども考慮して手術を検討します。手術には、自分の骨の形を整えることで股関節を温存できる「骨切り術」や、股関節を人工関節に入れ替える「人工股関節置換術」があります。

 人工股関節置換術は変形や痛みが強い場合に選択される治療法です。チタンやセラミック、超高分子量ポリエチレンなど、からだに入れても安全な素材の人工関節を使用します。痛みの軽減に非常に効果的で、入院期間も約2~3週間と社会復帰が比較的早いのも特徴です。術後はゴルフやダブルス・テニスなど衝撃の少ないスポーツも可能です。

「人工股関節置換術はかつて、耐久性の観点から高齢者におこなわれる手術でしたが、人工関節の耐久性が向上し、昨今は40代のような若年層でも手術を受ける人が増えています。とくに、『痛みを我慢せず、早めに手術をして、家族・友人との旅行やスポーツなどの活動を謳歌したい』という活動的な女性に多いです」(安藤医師)

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30~40代で関節軟骨がまだ残っている場合は骨切り術も可能