30~40代で関節軟骨がまだ残っている場合は骨切り術も可能です。骨切り術は術後の動作制限がなく、自然な動きが可能なため、活動度の高い人には向いています。ただ、骨切り部が骨癒合するまでの時間がかかるので、社会復帰に少し時間がかかります。
人工股関節置換術後のおもな合併症は脱臼や感染です。術後の合併症を防ぎ、正確で安全な手術を実施するため、術者が使用する手術器具と患者の客観的な位置情報をリアルタイム画像で提供するナビゲーションシステムの導入が進んでいます。さらに一部の病院では、術者の手の動きを精密に制御できるロボット支援手術も導入しています。これらは術前計画に沿った、脱臼しにくい角度での人工関節の設置や骨の削りすぎを防ぐのに役立ち、合併症の発生を防ぎます。
ひざの痛みには大腿四頭筋を鍛えることが有効
加齢とともに股関節だけでなく、ひざのトラブルを訴える人も増えていきます。中高年のひざの痛みのおもな原因となる病気は「偽痛風」「特発性膝関節内顆骨壊死」「変形性膝関節症」です。
偽痛風は60歳以上の人に多く、肝臓の代謝機能の低下によりピロリン酸カルシウムが関節周囲で結晶化し、おもにひざに炎症を引き起こします。ひざの痛みや腫れが特徴です。特発性膝関節内顆骨壊死は60歳以上の女性に多く、膝関節の軟骨の下の骨が微小骨折を起こし壊死します。夜間の強い痛みが特徴です。
中高年のひざの痛みの半数以上を占めるのは変形性膝関節症です。膝関節の内部には弾力に富んだ軟骨や半月板、薄く関節包の内側を覆う滑膜があります。軟骨や半月板によって通常は、膝関節を動かしても硬い骨同士がぶつかって傷ついたり、痛みが出たりすることはありません。変形性膝関節症は、加齢とともにこの軟骨や半月板がすり減り、その破片が関節内に散らばり、滑膜炎および関節内部に炎症が起こり、痛みが出てきます。変形性膝関節症の症状や進み方について、香芝旭ケ丘病院副院長の藤井唯誌医師はこう説明します。
「初期には立ったり、歩いたりする動作の動き始めだけ痛み、休むと楽になります。進行すると痛む時間が長くなり、階段の上り下りなどが困難になってきます。最終的には安静時でも痛むようになり、下肢がO脚に変形したり、歩行が困難になったりします」