
自分の研究結果では、明らかに性差があったんですよ。実験には自信があった。そして、臨床の話ともよく合っていました。
実は、私が研究している不整脈領域では、細胞レベルで病気をかなり正確に再現できるんです。化合物をふりかけたり、異常な電気刺激を与えたりして、細胞に不整脈を起こさせる。ノーベル賞の受賞対象になったパッチクランプという方法を使うんですけどね。私、その実験が大好きなんです。やめられない止まらない(笑)状態になって、若いころはよく徹夜しました。
最初に私が使っていたのはマウスの細胞ですが、山中伸弥先生が発見したiPS細胞の技術を使えば、ヒトの心臓での証明もできるかもしれない、これはいけるかもしれないと思いました。
最近は「いいところに目をつけたね」なんて言ってくれる人もいるし、「女の人ならではの研究だね」とも言われます。別にそれでいいと思う。自分が女であることは事実なわけだから。私は授業でも妊娠・出産の体験談をよくするんです。薬学部では体のことを教えるんだから、妊娠・出産の話は経験者の私に任せてって言っています。
草むしりも虫も好き
――生い立ちを聞かせてください。
東京の郊外で生まれました。父は会社員で母は専業主婦、私は一人っ子です。幼いころ、岡山の祖父母の家によく行きました。大きな農家で、私は草むしりが大好きだった。毎日やっていると、違うのが生えてくるのが楽しかった。飽きもせず、隅から隅までむしっていました。虫も好きでした。今も好きです。
小学校は楽しかった。勉強も好きだし、先生も友達も大好きで、学校の先生になりたいと思ったことはあったけれど、運動が苦手だったので小学校の先生は無理だろうと思ってた(笑)。
塾に行くようになって算数の楽しさを知ったのと同時に「上には上がいる」とわかって努力の大切さを知りましたね。それ以来、座右の銘は「勤勉」です。「己を知る」ということも自分に常に言い聞かせています。幸い、中高一貫の私立女子校に受かりました。
――進路はどんなふうに考えていたんですか?
私はなかなか絞れなくて。中学に入ってからは国語が一番得意になったんです。本もたくさん読んでいたので、周りから見たら私は文系だったんですよ。でも、得意を生かすっていうより、職業をどうするかだからねって思って。