今オフに最も注目された移籍劇が、西武の主砲・山川穂高がライバル球団のソフトバンクにFA移籍したことだった。
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山川の決断は、西武だけでなくソフトバンクファンから反発の声が上がった。なぜか――。FA移籍という現象だけだったら、ここまで多くの批判の声が聞かれない。義理人情を大切にする日本人の気質から「理解できない決断」に映ってしまったからだろう。山川は2022年オフに西武から提示された複数年契約を固辞し、単年契約を選んだ。この時点で順調にいけば昨季中に取得するFA権を行使し、他球団に移籍する可能性が高いとみられていた。スポーツ紙デスクは振り返る。
「涌井秀章(中日)、岸孝之、浅村栄斗(楽天)、森友哉(オリックス)…西武は多くの選手がFA権を行使して他球団に移籍しました。アットホームな球団で決して居心地が悪い球団ではないけど、FAでマネーゲームには参戦しない。山川はFA権を行使するならソフトバンクが移籍先の最有力だとささやかれていました。西武サイドも流出は覚悟していたと思います」
想定外の事態
18年に自己最多の47本塁打をマークし、19年も43本塁打で2年連続タイトルを獲得した。22年は41本塁打、90打点で二冠王に。球界を代表する長距離砲は稀少価値がある。ソフトバンクだけでなく、「FAの目玉」と他球団も熱視線を送っていたが、開幕して1カ月すると状況が一変した。
5月に知人女性への強制性交の疑いで書類送検され、1軍の表舞台から姿を消すことに。8月に不起訴処分(嫌疑不十分)となり、西武から無期限の公式試合出場停止処分を受けた。1軍出場は春先の17試合のみで打率.254、0本塁打。昨季から就任した松井稼頭央監督は山川を「不動の4番」として考えていただけに、想定外の事態は頭を悩ませただろう。4番が固定できなかった打線はリーグワーストの435得点。貧打がたたり、5位に沈んだ。