地域別で好調なのは東京都区部で、横浜市や川崎市など神奈川県も割と調子がいい。東京の多摩地区や千葉県は横ばいといった具合です。
これに対し、成約単価は首都圏のすべてで上昇しています。
つまり、悪条件の物件に関しては成約そのものが減る、ないしは、なくなる一方で、好条件の物件については相変わらず旺盛な需要が続いているということが読み取れます。
――好条件の物件が好調なのはなぜですか。
夫婦共働きの高所得世帯をはじめ、中国をはじめとしたアジア系の海外投資家、それから国内の富裕層といった、パワーのある投資家層の需要が旺盛であるためです。
こうした投資家層は、いずれも「駅前」「駅近」「大規模タワー」の物件を好みます。好条件の物件が市場に出ると、買い手はすぐにつく状況です。
特に訪日外国人客(インバウンド)の回復や円安で、海外投資家の資金は流入増が続くでしょう。海外投資家から見れば、1ドル=140円台といった今の円安・ドル高の水準ではバーゲンセールのように映るはずです。
共働きの高所得世帯は通勤・通学や買い物など、やはり利便性の高さを意識します。国内の富裕層は、かつては田園調布や成城の戸建て住宅を好みましたが、今はマンションを選ぶ傾向が強い。
好条件のマンション価格は今よりも1~2割程度値上がりしてもおかしくはありません。23年秋に大阪で「一部屋25億円」の新築タワーマンションが公開され、話題になりましたが、もしかしたら後から振り返ると「それでも安かったね」ということにもなりかねません。日本にはもともと、富裕層向けの物件がほかの主要先進国に比べて少ない。将来的には一部屋50億円や100億円といった高額物件が出てきてもおかしくありません。