今年5月、ロレックス専門店「クォーク 銀座888店」で起きた強盗事件の様子(写真:Aさん提供)
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 銀座の高級時計店に現れた白い仮面姿の男たちが、バールで次々にショーケースをたたき割り、腕時計をひっつかんではカバンにつめていく――。今年5月に10代の若者グループが起こした強盗事件の一部始終は、多くの通行人が撮影していたこともあり、動画や写真が日本中に拡散された。なかでも注目を集めたのが、強盗を閉じ込めようと店のドアを閉めた一人の女性だ。「メディアに話をするのはこれで最後」と取材に応じた女性は、当時強盗に立ち向かった理由、そして、今だから明かせる“後日談”を話してくれた。

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 5月8日、午後6時すぎ。東京・銀座のバーのオーナーママである40代のAさんは、ゴールデンウィークの旅行先だった沖縄からちょうど帰ってきたところだった。

 夜の営業に向けて準備をしようとタクシーで店に向かうと、通りには警報音が鳴り響き、人だかりができていた。通行人たちがスマホを向けている先を見ると、店の隣のビルに入っているロレックス専門店「クォーク 銀座888店」で、黒ずくめの男たちが暴れまわっていた。

 そのときの様子を、Aさんはこう証言する。

「(男たちは)とにかく興奮しながら、店内をガッシャンガッシャン壊していました。最初、YouTubeの撮影かなと思ったんです。でも、あのお店には高い時計がたくさんあるので、割に合わない。これは強盗だと思って、周りにいる人に『通報しましたか?』って聞いたら、みんな『してない』って言いながら動画を撮っていて……。急いで110番をしたんですけど、既に通報が何件かあったみたいで、警察からは『今向かってます』と言われました」

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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「ぶっ殺すぞ」と言われたときの気持ち