SNSを見るのはやめた
計3億円相当の高級腕時計などを奪った実行犯たちは、その日のうちに全員あえなく逮捕された。だが事件後しばらくは、連日やってくるやじ馬たちのせいで落ち着かない日々が続いたという。Aさんのマネをして時計店のガラス扉を押さえながら写真を撮る人、さらにはAさんの店の前で出待ちする人までいた。
「一度お店でテレビの取材を受けたので、そこに映っていた内装から、どのバーか特定できたんだろうと思います。やじ馬なのかメディアの記者なのか、『話を聞かせてくれ!』って勝手に入ってくる人もいて。あまりに不躾(ぶしつけ)なので、『うちは飲み屋なので、飲まないならお引き取りください』と伝えました」
さらにAさんをげんなりさせたのが、SNS上のバッシングだった。Aさんが強盗に対峙(たいじ)する様子を映した動画に、「こいつ何がしたいんだ」「海外だったら殺されてたよ」といったコメントが並んでいて、それ以上見るのをやめた。
「あのときは、なんとかしないと!という思いしかなかったし、ここは日本だし……。なんで見ず知らずの人が私のことを心配してるんだろうって、モヤモヤしました。でもなにより、『すげえババアじゃん』っていうコメントが一番嫌でしたね(笑)。沖縄からノーメイクで帰ってきて、羽田空港からそのまま来たので、せめて化粧しておけばよかったと思いました」