撮影/小山幸佑

 これはクライアント側に立ってみても必要な仕組みでした。自分が日雇いで入ったお店の方に「もし自分が来なかったらどうしていたんですか?」と聞いてみたところ、「自分だけで何時間でもやっていたよ。来てくれて本当に助かった」と言ってもらえた。「暇だと思っていた時間が、誰かのための時間に変わってお金も稼げる」、自分にとって必要だし、社会のためにもなる事業にできると直感しました。

好きだと思える仕事を

 突き詰めると社会課題の解決にもつながります。人手不足はどんな業界でも重大な問題で、そこにアプローチできることがひとつ。それに、人口減少社会の日本では今後、労働生産性を高めていくことが欠かせません。DX化は様々な企業が取り組んでいますが、プラスして必要なのは働くことを前向きにとらえ、モチベーションを持って働くことだと思っています。そのためには自分が好きだと思える仕事をすることが本当に大切です。

 タイミーは様々な業界を知る入り口になります。例えば、飲食業界で働いている人が飲食しか知らないのはもったいない。横にあるいろいろな業種を気軽に体験してみれば、もっとモチベーションを持てる仕事に出合うかもしれないし、逆にやっぱり飲食に向いていると気づくかもしれない。タイミーを日本全国津々浦々に広げ、ワンクリックで好きなときに好きな業種で働ける社会をつくります。

 そうやって誰かの人生を変えるきっかけになり、自分の仕事で世の中が少し変わったかもしれないと思えることは、自分のモチベーションにもなっています。タイミーを創業して約1年後に3億円の出資をいただきました。サラリーマンの生涯年収とも言われる額です。その金額を自分にかけてくれるということは、「生涯をかけて取り組みなさい」と言われたことだと理解しました。でも全く躊躇(ちゅうちょ)しませんでした。それだけ情熱を持って働けるし、自分がやるべきことだと思った。事業がうまくいくかどうかはビジネスモデルももちろんあるけれど、結局は経営者が熱い気持ちを持ち続け、ビジョンを語り、人を巻き込んでいけるかだと思っています。

 よく、若くてエネルギーがあるねと言っていただきます。でも私に限らず、Z世代と言われる世代はエネルギーがあふれていますよ。一方で、そのエネルギーをどう使うか、使い道がここでいいのかと悩んでいる人も多いと感じます。上の世代の方には、あふれる力をいかにうまく使うかという視点で若い世代を見てほしい。そのエネルギーが爆発力になればイノベーションも生まれるはずです。

(編集部・川口穣)

AERA 2023年12月11日号より抜粋

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