しかし、ベイズの定理では、新しいデータを使って事後確率を計算してしまえば、そのデータはもう捨ててかまわないのです。

 このため、コンピューターの記憶容量を節約できます。

 さらに、このベイズの定理は繰り返し使えます。

 つまり、新しいデータに基づいて事後確率を計算したあと、さらに新しいデータが入ってきたら、その事後確率を事前確率とみなしてベイズの定理をもう一度当てはめればOKです。

 そうやって、新しいデータが入ってくる度に予測をアップデートしていくことが可能です。そして計算後は、そのデータをどんどん消していけばいいのです。

 新しい経験(=データ)から学んでいくという点は、人間の学習とも似ていますね。

 受験対策は教科書を読むだけでは不十分で、模試や過去問を解く経験を積むことで力をつけていきます。スポーツだって、ルールを学んだだけで上手にプレーできるわけではなく、試合の経験を重ねることで上達していくでしょう。

 ベイズの定理は、このような経験の重要性を伝えています。ベイズの定理が捉えている本質は、“経験から学べば賢くなれる”ということです。

GPSを脇役にしたベイズ推定

 ここで応用例を紹介しましょう。日常生活で素早い判断が要求される状況といえば、車の運転が最たるものとして挙げられます。

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自動運転のAIに使われるベイズ統計