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 近年、ビジネスのさまざまなシーンで統計学が使われるようになった。特に、人工知能の分野で注目されているのが「ベイズ統計学」だ。これは18世紀にイギリスの牧師トーマス・ベイズによって作られた統計学だが、なかなか応用される機会がなく、21世紀になりコンピューターの発展と共に一気に実用化が進んだ。インターネットの検索エンジンや迷惑メールフィルタ、AIによる自動運転、お客さんが商品を買う確率の予測、がん検査など、多くの分野で応用されている。冨島佑允氏の新著『東大・京大生が基礎として学ぶ 世界を変えたすごい数式』(朝日新聞出版)では、この「ベイズ統計学」について記されている。一部を抜粋、再編集し、紹介する。

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事前確立と事後確率

 迷惑メールフィルタにはベイズ統計学が応用されていて、「このメールが迷惑メールである確率は〇〇%である」というふうに分析結果を確率として出力します。このようにベイズ統計学では、分析した結果を確率として出力します。

 ベイズ統計学は、新しいデータを学習することで今までの分析をアップデートしていくのが特徴です。ですので、新しいデータを読み込む前の分析結果(=確率)を「事前確率」、新しいデータを学習した後の分析結果(=確率)を「事後確率」と呼んで区別しています。

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冨島佑允

冨島佑允

●冨島佑允(とみしま・ゆうすけ) 1982年福岡県生まれ。京都大学理学部卒業、東京大学大学院理学系研究科修了(素粒子物理学専攻)。MBA in Finance(一橋大学大学院)、CFA協会認定証券アナリスト。大学院時代は欧州原子核研究機構(CERN)で研究員として世界最大の素粒子実験プロジェクトに参加。修了後はメガバンクでクオンツ(金融に関する数理分析の専門職)として各種デリバティブや日本国債・日本株の運用を担当、ニューヨークのヘッジファンドを経て、2016年より保険会社の運用部門に勤務。2023年より多摩大学大学院客員教授。著書に『日常にひそむ うつくしい数学』(小社)、『数学独習法』(講談社現代新書)、『物理学の野望――「万物の理論」を探し求めて』(光文社新書)などがある。

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ベイズの定理は単なる掛け算