現理事長の林真理子氏

理事会は「どうにかなるだろう」と楽観?

 理事長だった加藤氏を筆頭に、日大では昨年6月までに理事28人が総辞職。翌7月1日に林真理子氏が理事長に就任し、新しい理事会がスタートした。

 だが、それでも日大は生まれ変わることができなかった。

「特別調査委員会を設置して田中氏の不正を洗い出す作業を始めたり、田中氏を筆頭とする元理事に損害賠償を求める訴訟を起こしたりするなど、新理事会は背任事件の後始末に注力しました。これだけでも相当のエネルギーが必要ですから、不祥事の元凶である『運動部改革』は放置されてしまいました。理事会としては『もう少し澤田さんがちゃんとしていれば』と思っているかもしれません。しかし、第三者委員会が『情報を都合良く解釈し、自己を正当化する姿勢が顕著』と厳しく指摘した通り、理事会が『どうにかなるだろう』という甘い見通しで不祥事に対処していたのは間違いないでしょう」(石渡氏)

 そもそも、第三者委員会の設置が遅かったという指摘もある。林理事長が就任した昨年7月時点で、「日大の問題点を全て明らかにしてくれ」と第三者委に依頼していたら、早い段階で抜本的な改革に着手できていた可能性がある。

「結局、日大の首脳部は『職場内で綿密なコミュニケーションを取る』、『職場では幅広い意見に耳を傾ける』という当たり前のことができていなかったのです。複数の理事が当事者意識を持ち、『澤田氏の対処で大丈夫か?』とオープンに話し合える理事会だったなら、日大がこれほどの醜態をみせることはなかったと思います」(石渡氏)

 すべての責任を澤田氏に負わせようとする姿勢では、問題の本質を見誤ってしまう可能性がある。

(井荻稔)

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