「本部」の目が届かないキャンパス配置
大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は「日大のキャンパスは独特な“配置”になっています。実は、これが大きな影響を与えているのです」と指摘する。
「複数のキャンパスを持つ私立大学は珍しくありませんが、メインとなるキャンパスがあり、そこに複数の学部と大学本部が集約されているのが一般的です。ところが日本大学は少数の例外を除き、1学部で1つのキャンパスを構成し、首都圏だけでなく静岡県や福島県などに点在しています。このような“単科大学が集まった総合大学”という独特の成り立ちが、日大の不祥事頻発における原因の1つなのです」
具体的に見てみよう。大学本部の住所は東京都千代田区九段南。法学部は同区の神田三崎町。林真理子理事長が卒業した芸術学部は練馬区旭丘……という具合だ。
運動部と密接な関係にあるスポーツ科学部は世田谷区下馬。ここは数少ない「例外」に該当し、キャンパスには危機管理学部が併設されている。ちなみに「ブツ」や「パケ」の会見で話題を集めた澤田康広副学長(辞任が決定)は法学部の教授だったが、職務にはスポーツ担当が含まれ、危機管理学部で非常勤講師も務めていた。
「多くの私立大学で運動部は本部のコントロール下にあります。ところが日大の場合、本部は千代田区で、スポーツ科学部は世田谷区と距離が離れています。これは重要なポイントで、物理的な距離は本部の目が届きにくいことを意味します。運動部で不祥事が起きると、本部を無視した独断専行や、本部に対する隠蔽(いんぺい)工作を行いやすい環境だったのです」(石渡氏)