「日大のドン」だった田中氏の影響力
さらに石渡氏は「人事の問題」も指摘する。
「田中氏の逮捕を受け、日大は“田中カラー”を一掃しました。しかしスポーツ担当の教授、監督、コーチなどは学内に留まり、いわゆる“人心一新”とはならなかった。これは以前から危惧されていました。というのも、前理事長の加藤直人氏は21年12月、田中氏の逮捕を踏まえた記者会見を開きましたが、現場レベルでの“田中派一掃”には消極的な姿勢を示したのです」(石渡氏)
当時、理事長兼学長だった加藤氏は会見の冒頭、「田中氏との永久決別」と「影響力排除」を表明した。ところが具体的な対応策はまったく示されず、これに記者から疑問の声が上がったのだ。
記者が「決別とか影響力排除とか、かっこいい表現ではあるが、具体的にどうやって行うのか」という趣旨の質問をすると、加藤氏は「田中氏がいなくなれば、影響力はなくなる」と回答、以下のように続けた。
《あの人は田中派であるからとか、あの人はそうじゃないからとか、そういうようなことを人事考課であるとそれなりにしてしまいますと、これは逆にまた同じことになってしまうことになりますので、慎重に考えながら、そういうことを配慮しながら今度の学校運営を進めていきたい》
石渡氏はこう続ける。
「当時から加藤氏の姿勢は『手ぬるいのではないか』と疑問視されていました。結局、日大における運動部の“膿”は温存され、再びアメフト部を震源地とする大麻汚染が発覚。日大の信用はあっという間に地に落ちました。あの時、現場レベルでも田中派の一掃に着手していれば、現在のような状況にはならなかったはずです」