生徒さんたちが私に見せてくれた表情は、きっと親御さんと話す時とは違っていたはずです。ということは、私の息子たちにも親の知らない顔があるのですね。それを受け止めてくれる大人との出会いが、どうか豊かなものでありますように。見れば会場の先生たちは、私の弟のようでも友人のようでもあります。51歳になった私が当時の恩師たちと出会ったら、いい友達になれたかもしれません。
人生には、勝負の時もある。学歴が役立つ時もある。でも、学歴の話なんか一切しないでも「また会いたい」「話せてよかった」と思える人こそが、本当に知的な人、信用できる人だと私は思います。若者たちにはどうかそんな人になってほしいし、不完全な人のありようを肯定する眼差しを大切にしてほしいです。
※AERA 2023年12月4日号