タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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先日、ある男子校で高校1年生の生徒さんたちに話をする機会に恵まれました。
テーマは「人生の勝ち負けについて考える」。自分が高校1年の頃を思い出しました。世の理不尽さや人間関係に悩み、自己嫌悪でいっぱいだった暗黒の中学3年間。あまりにも数学ができないので「数学は人生に不要だ!」と先生に言いがかりをつけて大喧嘩した高校時代(先生ごめんなさい!)。全然お手本にならない私の話を、笑ったり考えたりしながら聞いてくれた生徒さんたち。終了後に何人も質問しに来てくれて、とてもうれしかったです。人が成長する現場に立ち会うのは、本当に光に照らされるような心持ちになるものです。生徒さんたちの瞳には瑞々しい知性が宿り、早熟な批判精神と葛藤の翳(かげ)りが映っています。うおお、尊い。10代の私も、きっと彼らのような瞳をしていたのでしょう。己を呪い世を呪っていた暗黒時代の少女からも、光は放たれていたのです。周囲の大人は大変だったでしょうが、今は感謝しかありません。