「要因の一つに『掻破(そうは)行動が条件付けされてしまい、悪循環におちいってしまうこと』があります。具体的には心理的ストレスやアレルゲンなどの悪化要因が掻破行動と結びついて皮膚が悪化し、皮膚の悪化がさらにストレスや刺激の悪化要因を招いて、負のサイクルを形成しています」(大矢医師)

 藤田医科大学ばんたね病院総合アレルギー科教授の矢上晶子医師は、看護師などと連携したスキンケア指導や患者教育にも力を入れています。「強いかゆみを訴える場合、背景に心理的ストレスが存在することが多い」と話します。

「妹や弟が生まれてかまってもらえなくなった第1子のお子さん、ピアノの発表会の直前や習い事が増えたタイミングで悪化するケースをよく目にします」

「かくことはストレス解消でもあり、子どもは仕方なくかいている場合があります。『やめなさい』と言われたらますますストレスがかかり、その状況が続くと親子関係にひびが入りかねません。思春期以降も症状の悪化が続いた場合、治療の拒否につながることがあります。まずは、思い当たるストレスを軽減してあげること、皮膚をかいても傷が最小限になるよう、爪を短く切ってあげたり、夏場はエアコンを利かせた部屋で、袖が長めの下着で寝かせてあげたりするなどの工夫をしてみてください」(矢上医師)

正しい薬の塗り方とスキンケアが何よりも大事

 かゆみで眠れず、昼夜逆転がみられるような場合には入院治療も選択肢となります。

「入院をしたら皮膚をかかないように、まず、湿疹が出ている部分を包帯で巻きます。その上で、症状に適したステロイド外用薬の塗布とスキンケアを看護師が患者や保護者と一緒におこないます。学童以上のお子さんや親御さんには塗り方やスキンケアの方法を学んでもらうのです。よくならない場合は、全身療法を検討します。重症の患者さんでも適切な治療で、必ずよくなります」(大矢医師)

 冒頭で紹介した綾香ちゃんは、約3カ月の入院で肌がすっかりきれいになり、その後は週に1~2回の少量のステロイド治療薬だけでコントロールができているといいます。

 アトピー性皮膚炎の子どもに対しては、将来、親の手を離れても自身で皮膚のコントロールができるよう、病気の知識を持ってもらうことも大事です。矢上医師の病院では小学2年生くらいから外用薬や保湿剤を徐々に自分で塗ることができるよう、看護師が指導をしています。

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アトピー性皮膚炎の早期治療が食物アレルギー発症の予防に