アトピー性皮膚炎が最も発症しやすいのは乳児から幼児にかけてです。つらいかゆみが続くと成長に影響が出ることもあります。小児のアトピー性皮膚炎の効果的な治療法について、専門の医師に聞きました。この記事は、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「アトピー性皮膚炎」全3回の3回目です。
【グラフ】10~12月生まれの子はアトピー性皮膚炎になりやすい調査結果はこちら
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鈴木綾香ちゃん(仮名、7歳)は、赤ちゃんのときにアトピー性皮膚炎と診断されました。湿疹の悪化が目立つようになってきたのは小学校に入学してまもなくのことです。ステロイド外用薬を塗っても炎症がおさまらず、かゆみで熟睡できなくなり、学校に遅刻する日が増えてきました。母親は綾香ちゃんがからだをかくたびに注意していたのですが、それを嫌がる綾香ちゃんとのバトルも激しくなってきました。母親は心身ともに疲れ、綾香ちゃんを連れて、子どものアトピー性皮膚炎を専門に診療する、国立成育医療研究センターアレルギーセンターにやってきたのです。
同センター長で子どもの重症のアトピー治療に多く携わってきた大矢幸弘医師は、「かゆみで眠れなくなった場合は、できるだけ早く適切な治療を受けるべきです」と話します。
「『かゆみ』で十分な睡眠がとれないアトピー性皮膚炎の子どもでは、身長の伸びが悪くなったり、学校生活で本来の力を発揮できなくなってしまったりすることが報告されています。顔に症状がある場合には、目の周りをかいたり、たたいたりすることで白内障や網膜剥離といった眼の合併症のため視力に影響が出ることもある。失明のリスクもあります」
かきむしりのストレスが悪循環を引き起こす
アトピー性皮膚炎の多くは乳幼児で発症しますが、ステロイド外用薬がよく効くこともあり、短期間で改善することがほとんど。「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」によれば、生後4カ月から3歳までの合計1778人を追跡した調査で3歳までの累積発症率は31.6%であるものの、その後、4カ月から1歳6カ月までに70.1%が、1歳6カ月から3歳までの間に48.1%が病気による症状がなくなる寛解に至ります。一方、冒頭の綾香ちゃんのように、なかなか寛解しないタイプがアトピー性皮膚炎全体の約10%存在することがわかっています。