ゼネコン「大屋根だけではもうけが出ないかもしれない」
リングは3つの工区に別れて建設されている。これらの施工主は、いずれも大手ゼネコンなどの共同企業体だ。
リングの建設費は当初、170億円と見積もられていた。それが350億円に増額されたことについて、工事を手掛ける大手ゼネコンの関係者は、
「最初の170億円という積算が甘かった。使っている木は集成材という細い木を貼り合わせたものですが、とんでもない分量が必要で3つの共同事業体がそれぞれ独自のルートでかき集めました。だから、言い値とは言わないまでも高止まりです。それに、埋め立て地なので地盤の工事にも相応の費用がかかります。さらに国際情勢の変化や物価高、ウッドショック(木材価格の高騰)、人件費、燃料費などの高騰で、『リングの仕事だけではもうけが出ないかもしれない』と会社の“お偉方”は話しています」
と話した。
そしてこんな本音も漏らした。
「うちの会社がリングを受注しているのはスマホで検索すれば簡単にわかります。SNSで『大屋根やめろ』などと炎上しており、たまにそうした内容のメール、電話などが会社にくるようです。ここまでやってきているので、東京五輪のときの国立競技場のように、途中で『やめた』はなしにしてほしい」
いったん「白紙撤回」に
東京五輪・パラリンピックでは、メイン会場となる新しい国立競技場に建築家のザハ・ハディド氏のデザインが選ばれた。しかし、総工費が膨れあがり、試算は当初の1300億円から3000億円、1625億円、2651億円と上下し、世論の猛反発を受けて耐えかねた安倍晋三元首相が「白紙撤回」を表明。建築家の隈研吾氏のデザイン案に変更し、建設費の上限を1550億円に絞りこんだ。
今、万博の建設に携わるゼネコン幹部や、万博協会の幹部が危惧するのは、そのときと同じようなことが繰り返されることだという。
地元では以前から見直し議論も
実際、地元自治体である大阪府、大阪市の両議会では、
「約350億円と非常に高額になってるんですけど、これ、要るか要らないか議論もいろいろあったかと思います」
「リングのやつがありますよね。大屋根というんですか。物すごい立派なもんやなと思うんですけれども、半年で(終わるのに)こんなん絶対要らんと思うんですよね」
などとリングについて見直しなどを求める声が2~3年前から上がっていた。