すっごく好きな人とは付き合えないから手ごろな相手で我慢する、というのは実は多くの人がそうだと思うのですが、そもそも手ごろな相手と付き合うくらいなら別に恋愛していなくても困らないわけです。ではどうしてこんなに恋愛を推奨されている気分になるのか。おそらく恋やセックスに人が向けるエネルギーというのはすごく膨大で、ちょっと他のものがかすむほどだからなのでしょうね。長く恋人がいない時って、生活は問題なくまわるけど、ふるえるほどの幸福がない気がしてちょっと焦るという気持ちもわかります。そういう時にいわゆる一対一のマッチングにこだわったみんなと同じ恋愛関係で勝負しなくてはいけない、と思うと、それこそ向き不向きや自分の自信のなさが邪魔をして、支配的な男のいいなりになったり、不倫で都合よく使われたり、理不尽な関係に甘んじたりしてうまくいかないことが結構ありませんか。私は大いにあります。

仕事や友人関係の中からたまたま恋に落ちて、たまたま向こうもこちらを好いてくれて、たまたまお互い独身で、ということがあればいいですが、めったにないし、そもそも学校みたいに大人数の同年代の知らない人と毎日大量に会うような場にいた頃を除いてそう簡単に恋には落ちない。本当に好きな人ができた場合は心持ちなんてものは吹き飛ぶし、いくらイイ女でいようとか、思いやりを持とうとか色々計画していたとしても、心身ともに言うことは聞きませんから、心と身体の欲望に耳を傾ければ良いとは思います。それよりも、大して恋に落ちていないのに無理やり都合の良い相手と恋愛関係を見いだそうとすると、あんまりロクなことにならない気がします。十代だったら適当に付き合って、一応何回か恋愛したことある、という記憶を作っておくのもいいとは思うんですが。

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自転車とセックスした人もいる