替え歌で覚える

「ばかばかエヘン虫」の替え歌で知られる「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、「地方のビジネスホテルでビュッフェ式の朝ごはんを食べるときにかかっている曲」(優勝者談)だし、「誰も寝てはならぬ」は、2006年のトリノ五輪で、フィギュアスケートの荒川静香選手が使って一躍有名に。プロレスファンのデスクが趣味で選曲した「ワルキューレの騎行」は、プロレスラー藤原喜明の入場曲として知られ、コッポラ監督の映画「地獄の黙示録」でもおなじみだ。

 一方、もう一人の50代男性がJ・S・バッハ「トッカータとフーガ ニ短調」に「♪鼻から牛乳?」と回答して笑いを取ったのに対し、そのあと優勝者が答えた正解には「知らな〜い」のブーイングも。「鼻から牛乳」に負けるバッハ先生。

「ビートルズやクイーンが好き」で「クラシックのイントロなんて『運命』しかわからないよ」と言っていたこの50代男性は見事「運命」を正解。その他「運動会でよくかかっているよね」な「ウィリアム・テル序曲」、「合唱で歌ったことがある」という「歓喜の歌」を正解して2位に付けた。

 一方他の回答者から「おーー」という絶賛の声が出たのは、音楽マニア50代男性の運動会使用曲だったというハチャトリアンの「剣の舞」。また自称「NOミュージック、MYライフ」なのに「白鳥の湖」「くるみ割り人形」とバレエ音楽だけ2連勝した40代女性も「なぜバレエだけ?」の声と拍手を浴びた。

 20代男性は、ほかの参加者がまだ何も聞こえていないマッハのタイミングで、「ボレロ」をピンポ〜ン。若い耳が有利だということもわかった。

2度目でも間違える

 最後に残った数人で、同じ問題で2ターン目に突入。驚くべきことに、1ターン目に確かに聴いた「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」に自信満々に「『四季』の春!」と答えるなど、「似て聞こえる曲が混同する」という「クラシックあるある」現象が勃発した。2度目なのに、また間違える謎のパターンも多い。

 ピアニストの夏目恭宏さんによると、「クラシックは出だしにインパクトのある曲が多いため、イントロクイズは歌謡曲やポップスより正解が出やすいはず。普通のイントロクイズでは飽き足らず、演奏家を当てるイントロクイズもありますね」。そんな修業を重ねつつ、「違う演奏家で聴いてみて、お気に入りのスゴい演奏を見つける。これが、ポストビギナーにおすすめの楽しみ方です」。

 知ってるのに答えられない「脳がバグった感じ」(前出50代音楽マニア男性)も味わえて、盛り上がることウケアイのクラシック音楽イントロクイズ。忘年会の催しにぜひ!(ライター・福光恵)

AERA 2023年11月6日号

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