(2)生産額ベース食料自給率
これについては、まったく意味がないばかりか消費者を迷わすものであろう。こんなやり方をとっている国は、世界広しといえども日本を含むわずか3つの国・地域 にすぎない。イギリス政府と台湾が同様の試算を公表しているが、双方とも「生産額ベース」という表現は使っていないばかりか、「食料」の範囲が日本とは異なるうえに、計算の方法も同じではなく、日本の生産額ベースと並べて比較すること自体に意味は乏しい。
農水省は、「生産額ベース食料自給率」を国民に供給される食料の国内消費仕向額(1年間に市場に出回った額)に対する国内生産額の割合を示す指標と説明している。2021年度のものでは58%となっていて、カロリーベース自給率よりもずっと高い。2021年度は66%だったので年度間の変動が大きいという、この方式の欠点ともいえる現象が浮き彫りになったようである。
しかし、そもそも価格は毎日のように変動するし、自給率の試算に当たって、どの品種でどこの市場のどの価格をとるか、消費時点(年度)とその食料の生産時点、そして為替変動を含めて輸入時点で変動しうる輸入価格をどう決めるのか、など単純な問題がこの方式では放置されている。こうした点をひとまずおいて、とにかく「消費量」といったところで、価格変動はつきものだから不安定なことは変わりなかろう。