性被害の声を上げた人が責められたり、被害者が自責の念にかられたり。私たちの社会には性暴力を容認する空気が漂っている。空気を変えるためにはどうしたらいいのか。AERA 2023年10月30日号より。
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子どもを狙った性犯罪は後を絶たない。過去2カ月間に朝日新聞で報じられた未成年者を狙った性犯罪だけをみても、全国各地で毎日のように起きている。現職校長、教員、塾の講師など子どもにかかわる職業に就き、多くの子どもに性加害を繰り返しているケースも少なくない。
これらは氷山の一角で、性被害と認識できていない、または被害を訴えていないケースも多数ある。
警察庁によると、児童ポルノ事犯の検挙件数は昨年、3035件に上り、前年に比べ66件増加。児童買春事犯も微増している。こうした状況を受け、今年7月には性犯罪に関する改正刑法が施行された。「強制性交罪」が「不同意性交罪」に変更され、同意のない性的行為が犯罪であることが明文化。不同意性交罪と不同意わいせつ罪の時効はそれぞれ5年延長され、被害者が18歳未満の場合は18歳に達するまでの期間が加算されることになった。さらに、性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられ、新たに「撮影罪」も新設されるなど、対応は進んでいる。
「10年前ならうやむやにされていたことが、きちんと犯罪として扱われるようになった。それ自体は歓迎すべき流れだと考えています」
そう話すのは、ジャーナリストでジェンダー問題に詳しい治部れんげさんだ。性暴力が問題視されることによって、これまで見えてこなかった実態が浮かび上がるようにもなった。
だが、まだ置き去りになっている部分もあると指摘する。
「日本版DBSや性交同意年齢の引き上げの議論を見ていても、男性側の自由の話ばかりが出てくる。加害者の更生や職業選択の自由の話になったり、真摯(しんし)な恋愛のたとえに50代男性と未成年者の関係をあてはめたりということに非常に違和感がありました」