AERA 2023年10月30日号より

男性の被害相談も増加

 性加害問題が注目されるにつれ、声を上げる人への誹謗(ひぼう)中傷も目立ち始めた。

 今年8月、大阪で行われたフェスに出演した韓国出身のDJ SODAさんが観客による性暴力被害に遭ったことを訴えた際には、SODAさんの服装に問題があると主張する声がネット上でわき起こった。また、旧ジャニーズ事務所の元所属タレントが被害を訴えた際には、「売名」「自業自得」と被害者への非難が相次いだ。

 まるで性加害を肯定するような声や空気はなぜはびこるのか。龍谷大学犯罪学研究センター研究員の牧野雅子さんは、その背景には差別感情もにじんでいると指摘する。

「DJ SODAさんの件では、人種差別的な声も目立ちました。ジャニーズ事務所の問題では、男性が被害に遭うことが『男らしさ』の社会規範から外れていることや、同性愛の文脈で語られることが、誹謗中傷を加速させました」

 17年の刑法改正により、それまで軽く扱われてきた男性の被害者も、性別に関係なく被害実態に即した対応がされるようになった。だが、改正から6年がたった今も男性が被害を訴えにくい風潮は根強くあった。そんななか、

「ジャニーズ事務所の加害問題が報じられるようになって、男性からの電話も増えています」

 そう話すのは、性犯罪・性暴力被害者をワンストップで支援する「性暴力救援センター・東京」(SARC東京)の支援員だ。中には何十年も前の被害を打ち明ける人もいるという。

「被害を訴えたくても、証拠が残っていないといった問題もあります。でも、つらい状況を一人で抱えず、いつでも相談してほしいと伝えています」

 芸能界特有の問題も根深い。18歳未満の少女が、露出のある衣装でグラビア撮影やイメージDVDの撮影などを中心に活動する「ジュニアアイドル」の世界では、性的消費への不快感を言いづらい構造がある。子役時代は大手芸能事務所に所属し、ジュニアアイドルとしても活動していた渡辺ありささん(29)は自身の体験を振り返り、こう話す。

「水着撮影会ではファンの方と長時間接するのですが、大勢の人が集まる“大撮影会”だと、変なお客さんが来ることもあります。出演者の中には、プロのカメラマンでない人に水着姿を撮られたくないという子もいましたが、それを言い出せない空気があるんです」

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