さらには、FMSに荷重が置かれたため、日本国内の防衛産業への支払いが5年ローンから10年ローンに引き延ばされるなどした。そうした国内防衛産業を支援するための法律も2023年に成立した。米国に借金を返しながら、新たな借金を作り続ける“無限ループ”に対応していくためには、防衛費をこれまでの倍の額にしなければ回らないということなのだ。その結果、予算が組めないから、27年度までのどこかのタイミングで必ず「防衛増税」なのである。

 首相官邸の関係者はこう言った。

「安倍氏がトランプ氏と約束した防衛費のGDP比2%を岸田首相が実現した。米国から巡航ミサイル『トマホーク』の購入を決めたのも、安倍政権時代の延長線上にある。安倍氏はトランプ氏に7兆円分の武器購入の手形を切っている。岸田首相がそれを引き継いだ」

 7兆円という金額はどういう根拠なのか不明だが、いずれにしても理不尽な防衛増税は、安倍氏が作ったツケを国民が払わされるということなのだ。

 そして米国がトランプ共和党からバイデン民主党に政権が代わっても、防衛費を倍増し、日本に武器を買ってもらう“約束”は引き継がれている。

 バイデン大統領が23年6月20日の自身の集会でポロリと暴露した。後に訂正してはいるが、支援者向けアピールに使われたその演説の中身は衝撃的だ。

「私は日本の議長、大統領、副……いや失礼、指導者と広島(G7サミット)を含め、確か3回会談した。そして彼(岸田)が……、私が彼を説得した結果、彼自身が何か違うことをしなければと思うに至ったのだ。日本は防衛費を飛躍的に増やした」

 安倍氏も岸田氏も、米国の言うなり。米国はそれを当然視している。日本政府に自主性はない。その結果、国民負担が増えるというのは納得できない。
 

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小塚かおる

小塚かおる

小塚かおる(こづか・かおる) 日刊現代第一編集局長。1968年、名古屋市生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。関西テレビ放送、東京MXテレビを経て2002年、「日刊ゲンダイ」記者に。19年から現職。激動政局に肉薄する取材力や冷静な分析力に定評があり、「安倍一強政治」の弊害を追及してきた。著書に『小沢一郎の権力論』(朝日新書)などがある。

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