ただ、まだ遊撃のレギュラーをつかんだとは言えない。真価が問われるのは「2年目のジンクス」に挑む来年だ。昨季遊撃のレギュラーをつかみ、リーグ連覇に貢献したヤクルトの長岡秀樹も今季は打率.227、3本塁打、35打点と打撃不振に苦しむ時期が長かった。相手バッテリーは当然研究してくる。門脇は対応できるか。スポーツ紙記者はこう指摘する。
「最も大事なのは守備です。今年がそうだったように、打撃で状態が少々悪くても遊撃は守備が良かったらスタメンで使ってもらえる。長岡も遊撃の守備能力が高いから高津臣吾監督は辛抱強く起用し続けた。1年を通して遊撃で試合に出続けたら、おのずとゴールデングラブ賞の有力候補になるでしょう。門脇は将来的に打率3割、20本塁打、20盗塁をマークする力を持っている。俊足巧打で坂本とは違うタイプの遊撃として活躍が期待されます」
坂本は12月に35歳を迎える。選手寿命を考えると、今年のシーズン中に三塁へのコンバートはベストの決断と言えるだろう。球界を代表する遊撃として長年活躍してきたが、近年は故障が目立つようになり、昨年は83試合出場で打率.286、5本塁打、33打点。シーズン規定打席到達が14年連続でストップした。今年は開幕から22打席連続無安打と状態が上がらず4試合連続スタメン落ちを経験したが、5月以降は調子を上げていった。チャンスメーカーとしてチームを牽引していただけに、大きな痛手だったのが故障での離脱だった。6月23日の広島戦(マツダ)で初回に走塁で脚を痛め、翌24日に「右太もも裏肉離れ」で登録抹消に。1軍復帰に1カ月かかった。遊撃の守備は体に大きな負担が掛かる。9月上旬から首脳陣の意向を受けて三塁へのコンバートを決断した。遊撃と見える光景、打球の速さなど違いは多いが、坂本は対応能力が高い。手堅い守備でソツなくこなし、打撃でも打率.288、22本塁打、60打点をマークした。