森田正光(もりた・まさみつ)/1950年、愛知県生まれ。気象予報士。92年、初のフリーお天気キャスターとなり、同年ウェザーマップを設立。現在は会長職(写真:ウェザーマップ提供)
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 将棋界で初めて八大タイトル独占を成し遂げ、藤井聡太八冠が誕生した。将棋ファンの気象予報士・森田正光さんは、この偉業をどう見たのか。AERA 2023年10月23日号より。

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 藤井聡太さんの勝率は約84%で、これは夕方に発表する翌日の天気予報が当たる確率と同じなんです。翌日ですし、雨が降るかどうかなので結構当たります。しかし、相手がいる対局で8割勝つというのは異次元の強さで、今回対戦した永瀬拓矢さんでさえ6割9分(2023年10月11日現在)です。いかに強いかがわかります。僕はガチで将棋ファンなので勝った、負けただけではない、勝ち方や勝ったときの振る舞いなども気になります。藤井さんは盤上ではものすごく激しい戦いをして勝ちを収めても、おみたいにふわっと着地させる、人格が穏やかで不思議な魅力がありますね。強くなり、勝ち続けるとどうしても自信満々で不遜になったりする人もいるでしょうが、藤井さんはそんなところがなくて、将棋が好きで好きでたまらない、将棋をするのが楽しくて仕方ない、そんな横顔が見え隠れするのも大きな魅力です。これまでの棋士の方々は勝負師という感じでしたが、藤井さんは将棋道を追求している求道者のようにも感じます。

 天気に関連してお話ししますと異常気象というのは30年に1回の出来事のことを言います。しかし藤井さんの八冠は100年に1回の出来事だと思います。それにネガティブな異常ではなく、非常によろこばしい偉大なことですからね。羽生善治さんが出てきたときも衝撃を受けましたが、藤井さんの出現はそれ以上です。同じ時代に生きていてよかった、AIと融合して出現した将棋界を超えた新しい時代のスター藤井聡太さんを見ることができて本当によかったと心の底から思います。

(構成/ライター・鮎川哲也)

AERA 2023年10月23日号