大山悠輔(おおやま・ゆうすけ)/虎の主砲として期待され続けて7年。岡田阪神で初めて全試合で4番に座る。四球数と出塁率はリーグトップ。真の4番に脱皮した
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 2位広島に11.5ゲームの大差をつけ、18年ぶりにセ・リーグを制した阪神。元阪神のエースで、日本シリーズで対戦も予想されるオリックスでもプレーした能見篤史さんに、今年の阪神の強さの秘密やシリーズの行方を聞いた。AERA2023年10月23日号より。

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 阪神ファン歴五十余年。“虎キチ記者”である筆者は、当初は岡田彰布監督に複雑な感情を抱いていた。

「手腕はあるが、強面で暗い」

 しかしいざシーズンが始まると、ベンチで白い歯を見せてニコニコ。好物のパインアメをなめる姿が「かわいいw」とSNSで話題になり、辛辣(しんらつ)な選手批判もほとんどなかった。選手に優勝を過剰に意識させないための「アレ」も、口ぐせの「お〜ん」も意図せず大流行し、ソフトなイメージにつながった。

ディフェンス重視貫く

 第1次岡田政権(2004〜08年)の発足した翌年に阪神に入団した能見さんは言う。

「確かに当時は今年ほどの笑顔はなかったですね。しかし、投手を中心にしたディフェンス重視の戦い方はほぼ同じです。違いはシーズン前、四球の査定ポイントをヒットと同等にするようフロントに進言したことでしょう。これがチームの方針として浸透しました」

 一昨年はヤクルトに大逆転されて2位。昨年は矢野燿大(あきひろ)監督が、シーズン前に「今年で辞める」と背水の陣を敷いたものの、3位に沈んで退任した。

「何か一つ変えれば勝てる」

 そう考えた岡田監督が取り組んだのが「四球=ヒット」の“意識改革”だった。

「打者への初球には甘い球が多く、ヒットになりやすいというのはデータで出ています。しかし好打者でも打率3割というのがバッターの世界です。その確率論から、岡田監督は四球の重要性を選手に意識づけしたかったのでしょう」(能見さん)

 チームの四球数は昨年の358個から494個へ大幅に増えた。出塁率も昨年の.301から.322へアップ。本塁打は巨人の164本の約半数(84本)しかなかったが、総得点は12球団でトップの555点だった。

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