帰国した時の楽しみは日本食。「焼き肉、すきやき、とんかつ。だいたい肉系です。お菓子も買って帰ります」。ご飯派かパン派かをたずねると「もちろんお米! パワーが出ます」と即答(撮影/植田真紗美)
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 来年開催のパリ五輪出場の代表権を獲得したプロサーファーの五十嵐カノア。五輪への思いや、パリ五輪前年でのハーバード大学院進学について語った。AERA2023年10月9日号より。

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―2年かけてパリ五輪への準備を進めてきた五十嵐カノア。2022年世界選手権の優勝と、23年同大会アジア1位で、それぞれ五輪出場権を獲得。23年は最強カードであるCTランキングでも五輪出場権を確定させ、2枠を他の日本人へ譲った。

五十嵐カノア(以下、五十嵐):「東京五輪の前は、すべてが手探りで準備していました。今は、五輪がどれほどすごいイベントで、どんな応援があり、プレッシャーを力に変えるためにはどうすれば良いかを知っている。自分には金メダルを取る力があると信じられるので、リラックスしていると思います」

世界で最も危険な海

―2度目とはいえ「リラックス」という言葉を口にするのには、会場にも理由がある。パリ五輪のサーフィンは、はるか遠く離れた太平洋、タヒチ島のチョープーで行われる。世界で最も危険とも言われ、7メートル近い波やバレル(トンネル状の波)と命がけで対峙する海だ。

五十嵐:「チョープーに初めて行ったのは12歳の時。大きな波がとにかく怖くて、しかも1本目でサンゴで腕を切ってしまって。帰ってからお母さんに『もう一生行きたくない』って言ったくらい。でも自分に問いかけました。『行きたくないってことは、自分が弱いから。強くなるためには必要な場所なんだ』と。それで毎年練習に通い、今でこそチョープーは、自分の弱さを強さに変えてくれた、優勝と同じくらいの価値がある場所。そこで五輪があるのだから、金メダルを信じることができるんです」

―怖いからこそ、通う。その逆境力を支えたのは、やはり両親の存在だった。

五十嵐:「2人が、『失敗しても頑張る』という姿を子どもの時から見せてくれました。そして、お母さんからは『人に優しく、自分に厳しく』といつも言われて育ちました。サーフィンも、人間としても自分に厳しくしないと、レベルアップしないよ、と。お父さんは何でも『自由に』と言ってくれるタイプで、2人のバランスも良かったと思います」

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