人付き合いが以前よりもうまくできるようになったのは、偶然の産物ではなかった。こゆきさん自身が、時間をかけて自分を見つめ直した成果でもあったのだ。
ここで話は、中学時代にさかのぼる。【前編】で紹介した、友人との口論の逸話だ。口論の結果、友人に手をあげられたこゆきさん。しかし、先生からは「正論で追い詰めたあなたも悪い」と叱責を受けた。
「時間をかけて自分について考えるなかで、『自分の言語能力では、人を追い詰めるつもりで話していなくても、結果的に追い詰めてしまう』ことに気づいたんです。自分は他者を傷つけたいわけではない。むしろ、しんどいと感じている人や苦しんでいる人を、適切な言葉で励ましてあげるなど、もっといい方向で自分の能力を発揮したい……そう思うようになりました。実際、友達の相談に乗っていたら『励まされた』と言ってくれることがありました。言葉って不思議なもので、自分のためだけに使うと孤立しかねないんです。でも、相談してくれた人も喜ぶような使い方をすると、みんなが良い方向に進めるんですよね。そういう経験を重ねるなかで、だんだん私自身も穏やかになっていったように思います」
その後、こゆきさんは東京大学に現役で合格。子ども時代に自身が悩んだ経験から大学では教育心理学を専攻し、現在は東京大学大学院教育学研究科の臨床心理学コースへの進学に向けて猛勉強中だ。将来的は公認心理師の資格取得を目指しているが、ギフテッドに関する論文執筆にも興味があるという。