こゆきさん(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 ギフテッドと呼ばれる人たちがいる。高い知性や能力を発揮する一方で、発達の偏りや気性の激しさなど、さまざまな困難を抱えるケースも多い。好評発売中の書籍『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)では、そんなギフテッドたちの声を取り上げてきた。東京大学で教育心理学を学ぶこゆきさん(21)は、自らのギフテッドとしての経験を生かしつつ、当事者の子どもたちの支援を行っている。背景には、【前編】で記したような学校生活に適応できなかった過去や、高い言語能力を利用し、友人を追い詰めてしまった反省がある。【後編】では、そこから成長し、「なりたい自分になれた」という現在までの経緯を聞いた。

【写真】こゆきさんの知能検査の結果はこちら

※【前編】<IQ139「ギフテッド」の21歳東大生が小中時代に抱いた違和感 「フルパワーでしゃべれる相手がいない」>より続く

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 小学生の頃は、学校に居場所がなかったこゆきさん。地元の中学校に進学したのち、2年生のときに特待生で学習塾に入ることになる。そして、ここは彼女にとって、初めて自分らしくいられる場所となった。

「とても楽しく、主体的に勉強できる環境でした。例えば、授業中に生徒が自由に発言したり、質問してよかったんです。結果、私語だらけでしたが、受験する予定のない学校の入試問題に挑戦したり、自分で問題をつくる時間もあったりと授業の内容も面白く、アクティブラーニングのようですごく私に合っていました。10人ほどいたクラスメートにも恵まれました。ごく普通のチェーンの学習塾だったのですが、塾があまりない地域だったこともあり、茨城県全域から『学校でははみ出し者だけど、勉強はすごくできる子』たちが集まっていたんです」

 楽しく自由に学べる環境が功を奏したのか、中学2年の終わりに、こゆきさんは学習塾が主催する模試で全国1位を獲得。高校受験では私学含め受験した8校すべてに合格するが、両親の意向もあり、茨城県でトップクラスとされる公立の進学校に入学した。

 しかしそこは、こゆきさんが想像したような環境ではなかったという。

「塾の授業が『いくらでもしゃべっていいし、先生もそれに柔軟に応えてくれる』スタイルだったのに対し、高校では『先生の話をずっと静かに聞いていないといけない』スタイルに戻りました。しかも、授業の進みはすごく遅いし、退屈さを感じるようになってしまいました」

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クイズ研究会の交流の中で「人間っていいな」