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加藤路瑛さん(ワニブックス提供)

 華々しい活躍を見せる加藤さんだが、決して平坦な道のりではなかった。幼少期、加藤さんは「靴下が嫌いな子ども」だった。真冬でも裸足で過ごし、外出時も裸足のままサンダルを履いた。当然、その足は氷のように冷たい。親には「見ているだけで寒い」と言われたという。

「今なら、何が不快だったのかを説明できます。一番苦手なのは、靴下のつま先部分の縫い目。そしてその縫い目の左右にあるつなぎ目の小さなコブ。これが小石を踏んだように痛く、また尖った石の砂利道を歩いているような痛みがあって、はいていられません。さらに、つま先から足の裏にかかる生地のツッパリ感や肌へのはりつき感が気持ち悪くて、はいた瞬間に脱いで投げたくなるほど」……。

 今では、出かける準備をすべてすませて、出かける瞬間に靴下をはくようにしているが、それでも「今、家を出ないと遅刻するという葛藤の中で本当に泣きそうな気持ちで靴下をはく」のだという。また、加藤さんを苦悩させたのは靴下だけではなかった。

「そもそも、服の生地が痛いんです。ズボンはまるでサンドペーパーのようで、太ももを削られるかのよう。制服のブレザーも、まるで鉛のように重かった。せっかく買ってもらった、けっして安くはない学校指定のポロシャツも、結局“痛み”で着ることができませんでした」

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「感覚過敏」が起きるメカニズムとは