同族経営の功罪

 ジャニー氏の性加害では、同族経営の弊害も問われた。

 企業統治に詳しい青山学院大学の八田進二名誉教授は、「ガバナンス以前の問題」と厳しく批判する。

ジャニーズ事務所は、元手金を出している人と経営の絶対権限を持っていたのは同一人物、つまりジャニー喜多川氏でした。しかも、取締役会が一度も開催されていなかったことが明らかになりましたが、最低限の法的要件を満たしていただけで、実効性のある取締役活動は何もなされていなかった。これは、ガバナンス以前の問題です」

 八田名誉教授は「同族経営には功罪がある」と指摘する。

「特にカリスマ的な経営者がいれば、意思決定が早く急成長します。しかし一方で、周りがイエスマンばかりになり、外部のいうことを聞かなくなってしまいます」

 今後、ジュリー氏は代表取締役になり、東山氏を新社長として、10月から新体制がスタートする──。

 記者会見では、「社名を聞いただけでフラッシュバックを起こす被害者もいるといわれているが」と指摘があったが、東山氏は、当面は社名変更しないという見解を示した。

 だが、これではジャニーズ事務所の体質は全く変わらないと八田名誉教授は言う。ジュリー氏が100%株式を保有している以上、取締役を操ることができ、簡単に傀儡政権をつくることができる、と。

 そしてジャニーズ事務所は被害者救済に当たる会社として、ジャニー氏が築いた全財産を拠出して被害者を金銭面と精神面から救済し、創業家のジュリー氏がその責任を持つべきだと指摘する。

「その上で、タレント活動は別組織をつくり社名も変え再出発することが求められるでしょう。その際、トップに立つのは、高度な倫理観を持ち、現在のジャニーズ事務所とは一線を画して民主的な組織運営ができる人。そして、エンターテインメント業界に精通した外部の人に運営してもらう。そうした全面的な改革が必要ではないでしょうか」(八田名誉教授)

 東山氏を社長に選んだことについてジュリー氏は、「所属タレントの気持ちをわかる人がトップに立つことが重要」と語った。

 先の上谷弁護士は、ジャニーズ事務所は「被害者への謝罪と経済的賠償の両方を速やかに行うことが重要」と強調する。

「多くの性被害者の望みは、まず加害者からの謝罪です。謝罪を受けて初めて、経済的にも補償してほしいという気持ちになってきます」

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「法を超えて救済、補償というのが必要」