「法を超えて救済」
謝罪の仕方は被害者によって違ってくる。直接会って謝ってほしいという人もいれば、会いたくないので、書面等で謝罪の気持ちを伝えてほしいという人もいるかもしれない。
東山氏は記者会見で、ジャニー氏の性加害について「人類史上最も愚かな事件」という認識を示し、具体的な謝罪や補償については、「法を超えて救済、補償というのが必要だなと思っている」と述べた。
「被害者がどのような形で謝ってほしいかは、個別に要望を聞いて対応する必要があります」
そう話す上谷弁護士は、ジャニー氏による性加害は、芸能界全体の問題でもあるし、日本社会の問題でもあると語る。
「今後ジャニーズ事務所は、性犯罪を許さないというキャンペーンを張ったり、ジャニーズ内部以外の性犯罪被害者を守る基金を設立するなどして、日本の芸能界のトップにふさわしい会社になってほしいと思います。それに、日本社会は子どもを性被害から守る意識が弱い気がします。被害を未然に防いだり、性被害に遭った子どもをできるだけ早く手厚く支援する仕組みを、社会全体でつくる必要があります」
性犯罪を前にしての沈黙は黙認と同じだ。その認識を持てなかった過ちを、本誌を含むメディアも、深く自省しなければいけない。
【ジャニー喜多川氏の 性加害問題をめぐる動き】
- 1980年代:元タレントがジャニー喜多川氏からの性被害を訴える手記を出版
- 1999~2000年ごろ:週刊文春が、ジャニー氏の性加害について「セクハラ」キャンペーン報道を展開
- 2004年:週刊文春の記事を巡る裁判で、ジャニー氏から所属タレントへの「セクハラ」について、記事の重要部分を真実と認定した高裁判決が確定
- 2019年7月:ジャニー氏が死去。87歳
- 2021年8月:姉の藤島メリー泰子氏が死去
- 2023年3月:英BBCが、ジャニー氏が複数の元所属タレントに性的行為を行ったとするドキュメンタリー番組を放送・配信
- 2023年4月12日:元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんが、ジャニー氏から性的行為を受けていたと告白
- 2023年5月14日:ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が動画を公開し、謝罪
- 2023年5月末:外部専門家による「再発防止特別チーム」の設置などを公表
- 2023年6月末:被害を告発した元Jr.らでつくる「ジャニーズ性加害問題当事者の会」が発足
- 2023年8月4日:国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会が、被害救済の必要性などを指摘する声明を公表
- 2023年8月29日:「再発防止特別チーム」が調査結果を公表
- 2023年9月7日:ジャニーズ事務所が記者会見。藤島ジュリー景子社長が辞任を表明。新社長に東山紀之氏が就任
(編集部 野村昌二)
※AERA 2023年9月18日号