この現状を受け、どう考えるか。諦めるのか、諦めないのか。選択肢は、ひとつしかない。
ならば、やれることもひとつだけだ。自己新記録を目指すこと。現状、どう頑張っても前回のジャカルタ・パレンバン大会と同数の結果を残すことなど不可能だ。であれば、来年のパリ五輪のことも考え、とにかく自分のレベルを一歩ずつ前に推し進めるしかない。
『諦めたら、そこで試合終了ですよ』
誰かの声が聞こえてくる。諦めなければ、必ず自分の努力は形になって表れる。それが記録スポーツの良いところだ。
日本競泳陣がやることは、諦めることじゃない。投げやりになることじゃない。今やるべきことに目を向け、目の前のことに集中し、自分を高めることだ。
世界水泳選手権では、自己ベストを更新した選手の数は“5”だった。アジア競技大会では、この数をどこまで増やせるか。大幅な増加に期待したいところだ。
今大切なのは、勝負に勝つことじゃない。自分に克つこと。その積み重ねが、勝負に勝つことにもつながっていくのだから。
(文・田坂友暁)