ところが、今回の世界水泳選手権で言えば、4月の日本選手権の結果から推測するに、事前からメダル争いどころか、決勝進出すら厳しい状況であったことは明白である。
簡単に言ってしまえば、苦しい戦いになることは覚悟の上だったのである。
だが、そんなことを口にして戦いに行くチームがどこにいるだろうか。選手たちは持てる力を最大限発揮するために厳しい練習に耐える。コーチたちも、選手たちの力を信じて少しでも記録を伸ばせるように日々指導する。自己ベストを出すために、必死の努力を積み重ねる。チームとして、選手として、コーチとしてーー。
苦しい状況が分かっていたなかで、選手たちは最後まで諦めなかった。コーチたちも選手をどうにか立て直そうとありとあらゆる手段を用いて指導していた。最後の最後まで諦めず、戦い抜いた日本代表チームに対し、あらためて敬意を表したい。
■まずは自己新更新を!
とはいえ、感傷に浸っているヒマはない。9月24日から第19回アジア競技大会(杭州2022)の競泳競技が開幕を迎える。アジア競技大会では、常に中国との争いになる。前回の2018年ジャカルタ・パレンバン大会でも、日本と中国が金メダルをそれぞれ19個で分け合った(メダル総数では日本が52、中国は50)。日本と中国以外の国が優勝したのは、男子50mと100mバタフライのシンガポール(ジョセフ・スクーリング)と、女子200m個人メドレーの韓国(キム・セヒョン)のみ。このように、毎年中国との覇権争いになるのが、アジア競技大会の特徴とも言える。
今回の杭州大会でも、世界水泳選手権同様、日本の競泳チームはかなり厳しい戦いを強いられることだろう。
単純に世界水泳選手権において、日本がアジア競技大会参加国(45カ国)のなかでトップを取った種目は、男子は5種目、女子は4種目しかない(世界水泳選手権に出場していない男子400m、800m、1500m自由形を除く)。そのほかは中国、韓国、香港がその覇権を握り、リレーに至っては、男女とも全種目(4×100mリレー、4×200mリレー、4×100mメドレーリレー、混合4×100mメドレーリレー)で中国か韓国がアジアトップの記録をマークしていた。