他にも、慶応がメディアの話題を呼んだ大きな理由の一つが、清原勝児(2年生)の存在だろう。父はPL学園で甲子園通算最多の13本塁打を放った清原和博氏。高校卒業後にドラフト1位で西武に入団すると、常勝軍団の4番として活躍した。その後は巨人、オリックスでプレー。歴代5位の通算525本塁打を記録した。甲子園に戻ってきた清原和博の息子――当然ながら、マスコミの視線は勝児に集中した。
その重圧は計り知れないだろう。今春の選抜に出場した際は背番号5をつけていたが、打撃で調子を落として今夏は背番号が15に。スタメンから外れ、ベンチから大声でナインを鼓舞する。2回戦の北陸戦で7回に代打で出場した際は、ライナー性の痛烈な打球を放ったが左飛に。準々決勝の沖縄尚学戦は6回に代打で出場して投ゴロ、三ゴロに倒れた。
他の球児ならこれほど注目されないが、勝児は名前がコールされただけで甲子園がどよめく。これも宿命だろう。
甲子園を取材するスポーツライターは勝児について、こう語る。
「他の部員に聞くと、『勝児はムードメーカーでチームを明るくしてくれる』と口をそろえる。打撃の状態が上がらずスタメンから外れて悔しい思いがあるのに明るく振る舞って、チームが勝つことを誰よりも喜んでいる。清原さんの息子という色眼鏡で見られて、つらい時期はあったと思います。でもそれを運命だと受け入れて力にしているように感じます。取材すれば誰もが応援したくなる魅力がある。今年が最後の夏ですが、野球は続けるようなので、大きな花を咲かせて欲しいですね」