
女性は地図が読めず、男性は話を聞かない──。いまだ根強い男性脳・女性脳言説だが、科学的根拠は実はない。意識をアップデートする時が来ている。AERA 2023年8月28日号から。
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夫と妻が言い争っている。裁縫がうまくできず妻に押し付けようとする夫、それをとがめる妻。すると、夫はこう言い放つ。
「男と女じゃなあ、(中略)脳の構造が違うてぇんだ、べらんめえ!」
夫はその後、男女の脳の違いを確かめに医者を訪ねる──。
アマチュア落語家・千金亭値千金(阪本真一)さんが披露する創作落語「男脳・女脳」の一場面だ。値千金さんは埼玉県鶴ケ島市の元職員で、男女共同参画を担当した際に創作落語を始めた。「育児休業」「男女共学」「夫婦別姓」などをテーマに、これまで16本の創作落語をつくってきた。「男脳・女脳」はその最新作だ。
落語では、脳の違いを確かめるべく訪ねてきた夫に対し、医者は夫自身の脳と他人の脳を入れ替えてみることを勧める。さまざまな脳を試しているうちに、「手先が器用で察しがいい、説明が下手で地図が読めない」という「典型的な女性らしい脳」を見つけるが、実はこの脳は男性のものだったというオチだ。
「男女共同参画は『男女の分け隔てなく機会が与えられるべき』という考え方です。しかし、『脳が違うから男性は(女性は)〇〇が苦手』という言説は性別役割分担を補強してしまう。仮に脳に男女差があったとしても、個人の生き方を左右すべきものではないと思い、この落語をつくりました」(値千金さん)
「神経神話」に注意
こうした男性脳・女性脳を巡る言説、つまり、脳には性別によって違いがあり、それぞれの得意分野が異なるとの主張を、誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。「男性は空間認識能力が高く、論理的思考に優れる。一方、マルチタスクは苦手であり、過程より結果を大切にする。女性は共感性が高く、成果よりもプロセスに意識が向く。地図を読むのが得意なのは男性、顔認識が得意なのは女性」といったあたりが「定番」だろうか。