宗教性の高さが喫煙に及ぼす遺伝と環境の影響の割合(作成・師田吉郎)

 しかし逆に結婚する前は付き合っている仲間や友達に合わせなければならないので自分の自由にならないけれど、結婚してしまえば、多少のわがままも聞いてもらえるので飲みたければ飲む、飲みたくなければ飲まない自由が増えると考えるかもしれません。

 約1700組の成人のふたごの女性を対象に行われた調査では、アルコール消費量の遺伝率は、30歳以下の場合、既婚女性ではわずか31%であるのに対して、未婚女性では60%でした。また31歳以上では既婚女性の遺伝率は46%から59%であるのに対して未婚女性では76%でした。どうやら飲酒に関する自由度は未婚女性の方が高く、また年齢が上がるにつれて高くなるようです。

 また環境の自由度は、欧米では宗教の影響も受けるようです。キリスト教、仏教、イスラム教、ヒンズー教など、いろいろな宗教がありますが、一般に宗教は、生活のさまざまな面について慎み深さを求め、感情に流されたり欲に溺れる行いを戒めるものです。国民の多くが無宗教である日本は、むしろ特別で、多くの国は生活の中に宗教によって生活を律する環境が、形式的にせよ作られていますし、無宗教な日本ですら、お盆やお彼岸にはお墓参りに行ったり、お坊さんを呼んで先祖にお経をあげてもらう習慣は残っている家庭も多いでしょう。そうした宗教的な活動にかかわって、その経典を読んだり、儀式に参加してお坊さんや神父さんの説教を聞く機会が多いか少ないかが、行動の自制を促す傾向に差を生むようです。

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宗教行事によって遺伝の影響が変わる