鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
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 職場の人に「こうあるべき」と人間性や大人の振る舞いを求めてしまうと悩む26歳女性。その塩梅を知りたいとアドバイスを求める相談者に、鴻上尚史が指摘する「人間関係に害毒を流し込む2大フレーズ」とは?

【相談192】職場の人へ、人間性や大人の振る舞いを求めてしまいます(26歳 女性 たまき)

 鴻上さん、編集部の皆さん、こんにちは。いつも連載を楽しみにしています。私は職場の人へ、人間性や大人の振る舞いを求めてしまうときがあります。職場はあくまでも仕事をする場ですし、私自身も未熟ですし、無くて七癖と言いますし、他者を変えることはできないと頭では理解しています。

 一方で他者への期待がなく「こうあるべき」と一切考えない人も少ないだろうと想像します。自分の都合に応じて他者に何らかの期待をするのは人間らしさだとも感じます。

 他者に期待をする自分を「人間だもの」と許容したい気持ちもあり、しかし勝手に過度な期待をして自分がストレスをためたり、期待を押しつけられた相手が窮屈な思いをするのは避けたいです。

 他者への期待・要求、「こうあるべき」の塩梅について、ぜひアドバイスを頂きたいです。よろしくお願いいたします。

【鴻上さんの答え】
 たまきさん。とても抽象的な相談ですから、たまきさんの聞きたいこととズレるかもしれませんが、僕なりに答えますね。

「職場の人へ、人間性や大人の振る舞いを求めてしまう」と書かれていますが、どんな内容でしょうか。

 例えば、ものすごくケチな上司がいたとします。部下にコーヒー一杯奢らないのはもちろんのこと、会社の飲み会では、「私は生ビールを一杯しか飲んでない。だが、AとBは、生ビールを三杯飲んだ。また、私はから揚げとだし巻き卵は一口も食べていない。これで、割り勘にするのは間違っている。私の担当金額は~」なんて毎回、主張する上司だとします。

 あんまり一緒に飲みたくない相手ですが、この上司に対して「過剰なケチはやめた方がいい」なんてアドバイスするのは大きなお世話だと僕は思っています。

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「期待すること」と「期待を押しつけること」は全然違う