※写真はイメージです。本文とは関係ありません(kuppa_rock / iStock / Getty Images Plus)
作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします

 優秀で優しくて頼りがいがあるのに、「過剰にケチ」という上司がいたら、期待している分、その性格を問題にしたくなるのが人間でしょうが、それでも、仕事に影響を与えない限り、口にすべきではないと思っています。

 もちろんもっと生臭い理由――お金がないので飲み会では上司に奢ってもらいたいと思っている立場でも、その飲み会が仕事の一環でない限り、ケチをやめるように求めるのは違うと思うのです。

 また、これも大切なことですが、「ものすごく悲観的な上司」に対しては、「悲観的な言葉を口にすること」をやめるように求めることと「悲観的な性格をなおす」ように求めることは違います。

 心の中はどんなに悲観的なままでも、それを態度や口に出さなければ、仕事に与える影響は激減すると思います。心の中は、上司のものです。そこに立ち入って、「心の持ち方をなおせ」とは誰も言えないと思うのです。

「勝手に過度な期待をして自分がストレスをためたり、期待を押しつけられた相手が窮屈な思いをするのは避けたい」と、たまきさんは書きます。この場合は「期待」ではなく、「私の期待通りに変わってほしい」という「要求」だと思います。

 心の中で「こうなったらいいのに」と期待することと、「こうなってください」と口に出して要求することはまったく違うということです。

 繰り返します。僕は、仕事に影響を与えない限り、「職場の人へ、人間性や大人の振る舞いを求めてしまう」ことは、やめた方がいいと思っているのです。

 もちろん、「最近、僕、ものすごく嫌われているんだけど、どうしてだろう? 僕の性格? どうしたらいい?」と相談されたら、「だって、主任はこの前の飲み会で、『俺はマグロの刺身を一切れも食べてないから120円、安くしろ』って言ったでしょう。そういうところですよ」と答えるのはアリです。主任に何も期待していなければ、「さあ、どうしてでしょう」もアリですね。

 人間関係に害毒を流し込む2大フレーズが「他人の迷惑にならないように」と「あなたのためを思って言ってるの」だと僕は思っています。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?
次のページ
鴻上さんが考える「こうあるべき」の原則