やることがないとなったら、昔あこがれていた趣味に手を出すのもいいかもしれません(写真はイメージです、Getty Images)
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 突然の休日に何をしていいかわからず、ただただ無為に時間が過ぎてしまうことはないだろうか。定年を迎えて、ぽっかり空いた時間に戸惑う人は少なくない。そんな人々はどうしたら生き生きした時間を過ごすことができるのか。心理学者の榎本博明氏が新著『60歳からめきめき元気になる人 「退職不安」を吹き飛ばす秘訣』(朝日新書)から一部抜粋、再編集し、紹介する。

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自由にしていいと言われても、どう過ごしたらよいかわからない

 自由がほしいと言っていた人も、退職して自由になると、せっかく手に入れた自由をもてあまし、暇でしようがない、毎日をどう過ごしたらよいかわからないなどと言い出す。

 強制されると抵抗を示す人も、自由にやるように言われると戸惑う。それはじつによくあることだ。

「言われた通りにやればいいんだ」などと言われるとモチベーションが下がってしまうと嘆く人に、「では、自分の思うように自由にやってくれればいい」と言うと、「いきなり自由にしろと言われても困る。どうすればいいのか教えてほしい」と言い出したりする。

 それと同じで、やらなければならないこと、必要なことだけして暮らすなんて虚しいと言う人も、自由にしていいとなると、どうしたらよいのかわからなくなる。

 とくに自分自身の欲求や気持ちを疎外して、組織の原理に則って行動するサラリーマン生活を長く続けてきた人は、自分自身の欲求や気持ちがつかめなくなっている。「自分が何をしたいのか、どんなふうに暮らしたいのかがわからない」「どうしたら自分が満足する生活になるのかわからない」というようなことになってしまう。

 もっとも、職業生活の真っ只中で、そうした自分の欲求や気持ちを始終意識していたら仕事にならない。そういう自意識を遮断しないと有能な働き手でいられない。その意味でも、自分自身の欲求や気持ちを疎外するのは、組織に適応するための有効な戦略だったのである。

 組織からあてがわれた役割に徹していれば、無事に職務を果たせるし、それに見合った報酬が与えられる。自分なりの達成感も得られる。

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