ええ、液体には規則構造がありません。でも、規則的ではないものの「構造」はあります。分子同士がどんなふうに分布しているかは液体の種類によって違う。ちょっと専門的になりますけれど、それを通常は「動径分布関数」と呼ばれるもので表現します。それをX線を利用して求める装置と方法論を新たに開発して、1988年に結晶学会賞をいただきました。やがて、液体の中に無理やり構造を見いだすのではなく、「乱れ」を「乱れ」として定量的に表現することはできないかと考え、「ゆらぎ」の研究につながり、私のライフワークとなりました。
――博士課程を3カ月で飛び出したからこそ、新しい研究テーマに出会えたわけですね。
そうですね。学習院大時代は、本当に自由に、伸び伸びと研究を楽しみました。村田先生はしばらくして東大に移られたんですけど、私がそのまま学習院大にいられるように頼んでくださり、後任として北海道大学からいらした飯島孝夫教授にお世話になって、結局17年、学習院大にいました。
その間に結婚して、子どもを1人産みました。
>>【後編:『白い巨塔』のような経験も「恨んでも仕方ない」 女性実験化学者74歳が築いたキャリアと自負】に続く