写真はイメージです(Gettyimages)
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 7月23日放送の山下達郎がパーソナリティーをつとめるラジオ番組「サンデー・ソングブック」(TOKYO-FM系)を聴いた。

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「極私的・坂本龍一追悼特集 PART 2」と題された放送でセレクトされた楽曲は、「個室」(中原理恵)「本気でオンリー・ユー(LET’S GET MARRIED)」(竹内まりや)、「あしたこそ、あなた」(矢野顕子)、「TIBETAN DANCE (VERSION)」(坂本龍一)、「GREENFIELDS」(矢野顕子)、「ON A CLEAR DAY(YOU CAN SEE FOREVER) 」(LIVE"84/09/17 渋谷ジャン・ジャン") /坂本龍一、矢野顕子、山下達郎、など。いずれも70年代から80年代にかけて、坂本龍一と山下達郎が一緒に仕事をした音源だ。

■山下達郎が語る坂本龍一への思い

 山下が語ったエピソードはどれも貴重なものばかり。「本気でオンリー・ユー(LET’S GET MARRIED)」の制作中、イントロに「結婚行進曲を入れよう」ということになり、同じスタジオでアルバム「音楽図鑑」をレコーディングしていた坂本に弾いてもらったとか、「GREENFIELDS」のコーラスとして参加した山下が「クリック(テンポを示すガイド音)が欲しい」と要求したところ、矢野に「クリックがないと出来ないの?」と言われたとか。才能と個性を併せ持ったミュージシャンが綺羅星のごとく居並び、日本のポップミュージックがもっとも豊かな時代の逸話の数々に「そんなことがあったのか」と驚き、楽しんだリスナーも多かったはずだ。

 番組の終盤、山下は坂本を偲び、こう語った。

「坂本くんは本当に仲良かった時代もありますので、本当に惜しい才能、まだまだ長生きしてほしかったですけど、彼の名前を継いで、語って、居続けていたいと思います」「政治的な信条は少し違ったことはありましたけど、彼が友人であることは何の変わりもありません」

 坂本と山下の“政治的な信条”の違い。それを端的に言えば、“ノンポリのままでいられるか(いられたか)どうか?”ということになるだろう。

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森朋之

森朋之

森朋之(もり・ともゆき)/音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動をはじめ、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、音楽ナタリー、リアルサウンド、オリコンなど。

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両者がキャリアを築き上げた70~80年代