自民党離れが加速している。朝日新聞が7月15、16日に行った調査では、これまで30%台をキープしていた政党支持率が、ついに28%に。特に女性の支持の落ち込みが著しく、6月の調査での33%から24%に急落した。内閣支持率も報道各社の調査で軒並み下がるなか、岸田首相は「(支持率は)いずれ上がる」と発言し、どこ吹く風。東京新聞の記者として、政治の問題に切り込み、発信を続ける望月衣塑子氏は、岸田政権が国民の生活を後回しにして「軍拡」に突き進んでいると指摘する。

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――岸田首相の言う「新しい資本主義」について、望月さんは「軍産学複合型国家を目指そうという話だ」と読み解きました。岸田政権が、軍拡に突き進む理由とは?

 岸田さん率いる宏池会は自民党内で人数が多い派閥ではないので、田中角栄さんや小沢一郎さんのようにアメリカに梯子(はしご)を外されちゃうと、長期政権は難しいと思っているのでは? あとは、安倍さんが乗り越えられなかった諸課題、たとえば北朝鮮の拉致問題を軟着陸させるためには、アメリカの協力が必要だ、とか。

 どの国も政権の座についた人は、前の首相ができなかったことを達成して、レジェンドを作りたいって思うようになるみたいです。だから、「台湾有事に備えよう!」っていう旗印のもと軍事にお金をつぎこんで、アメリカの肩代わり予算をどんどん増やしていく。国民としては、「結局、自らの政権基盤を強化するためには、私たちよりアメリカ様が大事なんだな」って思ってしまいます。

 でも最近のアメリカは、中国に対して慎重になってきていますよね。対中融和派のキッシンジャー元国務長官が習近平国家主席と会談したり、要人たちが中国に渡ったときに発信する内容も、「中国の大国化は一定程度認めるけれど、もうちょっと人権のことも考えてください」と、譲歩しつつも牽制する感じになったり。中国のほうもアメリカを完全に敵視する発言が少なくなってきていて、やっぱりお互い「戦争したら終わりだな」って気づいているんだと思います。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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岸田首相の「聞く力」、実際は……