熊本県天草市の「もぐし海のこども園」は、ウミガメが産卵にくるほど美しい茂串白浜海水浴場がすぐそば。海とのふれあいを大事にしている(キッチハイク提供)
熊本県天草市の「もぐし海のこども園」は、ウミガメが産卵にくるほど美しい茂串白浜海水浴場がすぐそば。海とのふれあいを大事にしている(キッチハイク提供)

 現在、留学先は26園ある。海が近く砂浜で遊ぶことも多い本県天草市の園や、80%が森林という地の利を生かして「木育」に力を入れる岐阜県美濃市の園、立山連峰の絶景を望む富山市の園など、地域の特性は子どもたちにとって非日常の体験になる。

 新潟県南魚沼市の認定こども園「金城幼稚園・保育園」では、昨年10月から受け入れを開始。月に1、2組の利用があるという。角谷正雄園長は園の魅力をこう話す。

「魚沼はコシヒカリの米どころですので、田植えから稲刈り、天日干し、足踏みでの脱穀、精米、もみ殻を燃料にした釜での炊飯と、園では米の1年を体験できます。園の畑で野菜を収穫して、料理教室もやります。冬には、2~3メートルの雪が積もる豪雪地域ですので、雪遊びやスキー教室も行っています。雪を見せたいと、福岡県のご家庭の利用もありました。先日は、日本滞在中に利用したいという香港のご家庭と、オンライン面接をしたばかりです」

稲刈りなど、1年を通して米どころならではの体験ができる(キッチハイク提供)
稲刈りなど、1年を通して米どころならではの体験ができる(キッチハイク提供)

 留学では、在園児との交流も深まる。キッチハイクの福田さんのもとにも様々な現場の声が届く。お互いの住んでいる町を地図で確認し合ったり、20階建てのマンションに住んでいるという自己紹介に「お空に住んでいるの?」という質問があったり。角谷園長は、異なる環境で育つ子ども同士の出会いは、在園児にもよい影響を感じているという。

「周りが田んぼですから、園庭にもカエルがぴょんぴょん跳びはねているんです。都会の子どもたちは大興奮して捕まえようとしますが、地元の子どもにとっては当たり前の光景なので、一体何が面白いの?とポカンと見ています。

 でもそのうちに、特別なことなのかもしれないと、はたと気づくわけです。カエルの種類に興味を持ち、図鑑で調べる姿が見られました。『絶滅危惧種のカエルのおたまじゃくしがいた!』と大騒ぎになったこともありました。普段の生活のなかに地域の特性を発見する、在園児の体験にもつながっています」(角谷園長)

 どの園も最終日の金曜日は別れの日。2週間もあれば、子どもたちはすっかり仲良くなる。寂しいと抱き合って泣く姿に、先生たちも涙ぐむという。

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子育てのリフレッシュにも