現在放送中のNHK大河ドラマでの名演が話題になるなど、年齢を問わず人気の俳優、松山ケンイチさん。6月公開の時代劇映画「大名倒産」でも熱演を見せています。今回は松山さんに映画について、また家族での田舎暮らしについてうかがいました。
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■子どもからシニアまで楽しめる新感覚の時代劇
「大名倒産」は、幕末の江戸時代を舞台に、財政赤字に苦悩する藩の若き殿様・松平小四郎の活躍をコミカルに描いた時代劇です。今回は、主演の神木隆之介くん演じる小四郎の兄・新次郎役で出演しています。
新次郎は、いわゆる“うつけ者”の役どころ。鼻水を垂らして登場するなど、常識外れで周囲は敬遠したくなるようなタイプです。それでも心優しく、庭造りには天賦の才を発揮し、無垢でピュアな存在です。
演じるにあたってお手本になったのが、今回メガホンをとった前田哲監督。前田監督とは僕が20代のころから親しくお付き合いさせていただいていますが、とても無垢でピュアな方で役作りの参考にさせていただきました。
監督と一緒に仕事をした前作の映画「ロストケア」(※松山ケンイチと長澤まさみが初共演を果たし、連続殺人犯として逮捕された介護士と検事の対峙を描いた社会派サスペンス)では、表現の仕方や演じ方について、かなり話を詰めて作り上げていきました。今作では前田監督は、「ロストケア」の時とは違い、現場をすごく盛り上げようとしていたのが印象的でしたね。そんなピュアな仕事への向き合い方をそのまま吸収して新次郎を演じました。
「大名倒産」は、年齢に関係なく時代劇に親しんでもらえるような現代風のセリフ回しや演出になっています。また、勧善懲悪と悪代官の成敗といった昔ながらのわかりやすい時代劇のプロットは守られています。だから子どもやシニア層の方々、みんな一緒に楽しめる内容になっていると思います。
■田舎暮らしが俳優業にもプラスに
4、5年前のコロナ禍以前から家族で田舎暮らしを始めました。東京で仕事があるときは単身赴任していますので、2拠点生活が基本になっています。
田舎暮らしを始めた理由はいろいろあります。一つは、家族との時間や趣味を大切にするためです。
今までは、映画やドラマの仕事が始まると、演技のことをずっと考えたり、その世界に引き込もっていました。東京暮らしだと、仕事と家族、趣味に充てる時間や気持ちの切り替えがうまくできず、僕自身や家族にとってもプラスにならないと感じていました。それを解決するには、環境を変えることが一番だと思ったんです。